「障がい」とは、一般的には「妨げになるもの」を意味します。
障がい者福祉の障がいも日常用語から派生したものであるので否定的な意味でとらわれやすいのですが、
実際には、障がいのある人は「妨げになる人」ではなく、むしろ心理・制度・物理的な「妨げ」により、
負担を受けている人と見るのが正しいのかもしれません。
では、障がいはどういうことで「病気」や「けが」と違うのでしょうか。
大きな違いの一つは、「治療して治るかどうか」ということです。
病気やけがは治療して治るものが多いのですが、
障がいは人間が社会生活していく上で必要とされる能力が長期間回復しない状態であることが多いです。
しかし、外的要因により、「できなかったことができるようになる」可能性は十分にあります。
例えば、動けなかった人が松葉杖や義足、
車いすとガイドヘルパーや家族などの支援者の存在で動くことはできるようになります。
支援者として抑えておきたいのは、
たとえ重度の障がいにより歩けなくなったとしても一生動けないままということはないということを理解しておく必要があります。
国際生活機能分類(ICF)
国際生活機能分類とは(ICF)とは、世界保健機関(WHO)による国際的な障がいの考え方のことで、
それまでの「国際障がい分類」(ICIDH)を改訂したものです。
国際障がい分類では、「障がい」を
「機能障がい」「能力障がい」「社会的不利」の3つに分類しました。
「機能障がい」とは、
病気又はけがによって脳機能が阻害されることです。
「能力障がい」とは、
実生活での活動が制約されることです。
手足が動かせなくなったり、読み書きなどの言語能力が低下することです。
「社会的不利」とは、
就職や恋愛、結婚などで不利益を受けることです。
国際生活機能分類では、
従来の障がいのある方のみを対象にしたモデルではなく、
全ての人を対象とした分類です。
ここでは、障がいを否定的な表現として使用せず、
誰にでも起こりうるものとして肯定的、または中立的に表現されています。
更に国際生活機能分類では、
「環境因子」と「個人因子」がモデルのなかに組み込まれています。
「環境因子」とは、
人々が生活し、人生を送っている物理的な環境や社会的な環境、
人々の社会的な態度による環境を構成する要因のことです。
「個人因子」とは、
年齢、性別、人種、職業、社会的地位、習慣、性格、人生体験などといった健康状態にも、
障がいにも属さない特徴のことです。
要するに、
国際生活機能分類では障がいに関して改善していかなければならないことは、
「環境因子」ということです。
「社会のバリア」を無くすことで「個人の障がいの改善」ではないということです。
参考文献(はじめて学ぶガイドヘルプ)野村敬子編著